のんびり備忘録

漫画と映画を中心に色々な感想を書いていきます。

ゆったりと神秘的な魔法の世界に浸る【漫画『魔法使いの嫁』感想】

面白い。普段ファンタジーを読まないのにハマっています。

自分がファンタジーものと言われて思い浮かべてしまうのが、バトルものかラノベとかによくあるコメディ。『魔法使いの嫁』もタイトルを見たときに「またそういうのかなー。でも人外×少女かー絵柄も繊細な感じで好きだしなー」と思いつつ、購入。

 

◆あらすじ

 少女を金で買ったのは、ヒト為らざる魔法使い……。

羽鳥チセ15歳。
身寄りもなく、生きる希望も術も持たぬ彼女を金で買ったのは、ヒト為らざる魔法使いだった……。

あらすじ引用元→http://books.rakuten.co.jp/rb/12690122/

  

主人公・チセが魔法使いになるため、魔法使い・エリアスをはじめ人々から様々な理を学んでいく。敵と対峙するシーンはあるもののアクションバトルなどはなく、謎の生き物との触れ合いや怪異に立ち向かいながら、ゆったりとお話が進んでいきます。

魅力的なのが、海外の児童文学や絵本を彷彿させる絵や言葉運び。鉛筆や万年筆のような温かみのあるタッチは、この世界観にとても合っています。

世界観も、絵本や民話で読んだような設定がたくさんあって、自分たちに馴染み深い植物や道具を使っているから、「この世界のどこかにあるかもしれない」というロマンがある。例えば、ハシバミの枝で古い石を12回叩いてケンタウロスを呼び出すとか、泉に浸かって魔力を回復するとか。(こちらは東洋オカルトファンタジーだけど)小説「陰陽師」のを彷彿とさせる。化物やモンスターだけではなく、そういった雑学的なものを好きな自分がはまらないはずがなかった。

 そして、それらに絡めた心温まる人間ドラマがとても素敵。印象的なエピソードを一つだけ上げるなら、老竜ネヴィンのお話でしょうか。

 

◆印象的なエピソード:老竜ネヴィン

◎初めて訪れる竜の巣(1巻第3篇)

教会から依頼を受け、竜たちの巣の様子を見に行ったエリアスとチセ。そこでゆっくりと死を待つ老竜・ネヴィンと出会う。竜の"共有する力"で記憶を読まれてしまったチセ。ネヴィンは優しく「飛べない君が飛ばなくてよかった」と言葉をかける。

「飛べない君には本当に飛ぶ楽しさを教えたほうが良さそうだ」。そうして、ネヴィンの空を飛ぶ記憶を見せてもらい、最期に夢の中で共に空を飛ぶ。チセの魔力のおかげで最期に飛べた感謝を述べ、死した後は樹木の苗床になるから、杖を作るときは私の樹を使ってほしいと告げ、ネヴィンは土に還っていく。

◎杖作りのお話(4巻第18篇)

 ネヴィンの体を糧に育った菩提樹で杖を作ったチセ。完成間際、死者と生者が会うことができる"境目"と呼ばれる空間へ。"縁の糸"でこちらへ招いたネヴィンと再会する。

浮かない顔をするチセに「練習に独り言を吐き出してみては」とネヴィンは。

いつ手放されても良かったのに、いつの間にか自分のことを話さないエリアルに寂しさを感じてしまった。興味がないままなら良かったのに――。

懇々と語るチセにネヴィンが言葉を掛ける。

 

ここが本当に好き。「あまり己を低く見ると、君に救われた我々をどうでもいいと言っているのと同じだよ」とか、考えるよりも先に涙が出てしまった。ネガティブとか強い自己否定とかをそっとほぐす感じで。でも、説教とか押し付けがましいとかないんですよね。こんな人と出会えたチセがとても羨ましい。自分も出会いたかった。

 

◆「魔法使いの嫁」になるまでの物語

タイトルが「魔法使いの嫁」で、最初でもエリアスが「嫁にするつもり」とか言ってるけど、今はまだまだ"師弟"な感じ。エリアスが魔法の師匠なのはいわずもがなですが、エリアスは共感する能力が欠けていたりするので、チセがそういったことを教える師匠になったり……。

お互いの過去・事情から最初は身を寄せ合っているような二人ですが、少しずつ信頼を重ねていって本当のお嫁さんになるのかな。と思います。今は冷静に文字を打っていますが、一瞬でも恋情が見え隠れし始めたら、トキメきで爆発して死ぬかもしれない。

 

 

◆不思議なことと名称のお話

……ところで、杖作りの話を書いていて思ったのが、"不思議なことにはコレという名称がないな"ということ。

上の文章で"境目"と呼ばれる空間とサラッと書いてるけど、本編ではこんな感じ。

突然あらわれる広い空間。

チセはブランコに乗っている。

ネヴィン「久しぶりだね。ちいさな魔法使い」

下を見ると、樹木でできた広場にネヴィンがいる。

チセ「貴方は……」

チセ、ブランコから降りて、ネヴィンに近づく。

ネヴィン「私の枝を杖にしてくれてありがとう。君の役に立てるといいんだが」

チセ「大事に使います。――ここはどこですか? どうして私と貴方はここに……?」

ネヴィン「その杖によって君と私に縁の糸が結ばれ私が望んだから。ここは境目。旅人と旅を終えた者、あちら側の者こちら側の者。決して交わらぬものが交錯を許される道」

空間に枝を広げる大きな樹木。

 ※4巻より文字起こし

一文にまとめるの大変だった!でも、「カンタンには説明できない不可思議なこと」っていうのが現れているようで、すごく好きなセリフたちです。

 

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